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2020.8.7

「世界に通用する紳士」は未来を築き地球を守る
甲南高等学校・中学校(兵庫県 男子校)

 

今の子供たちが社会に出る頃、世の中は大きく変化している。しかし、その変化に子供たちの意見は反映されているだろうか。どんな未来にしたいのか、生徒が考え、意見を発表する——甲南高校が取り組む”未来を築く”学びを紹介する。

オリバーソース株式会社への企業訪問

 

——自ら意見や内容を考える想像力や普段目を向けないところに視野を向けるなどの力が身についた

——様々な分野から物事を見ることで、自分の世界を広げることができると分かった

同校生徒が「老舗企業・OB企業研究」で企業を訪問して、ビジネスプランの作成に取り組んでの感想だ。訪問する企業の多くは関西の地元に根付き、地域のために貢献している。このような企業の社長にOBが多いのも同校の校風と言える。キャリア教育研究チームの花野勝幸先生は次のように言う。

「私たちが『甲南ファミリー』と呼んでいる卒業生の仲間意識はとても強固です。企業訪問のプログラムでは、社長が経営者の立場として講演してくれるだけではなく、先輩の立場として友だちの大切さなども話してくれます。」

同校のキャリア教育は「ビジネスリーダーの育成」がキーワードになっている。「ビジネスエリート」ではなく「リーダー」であるところに甲南の矜持を感じる。この取り組みは7年前、コース改編により、学びの内容を大きく見直したことから始まった。

「世界は大きな変化に直面しています。AIがロボットと組み合わせられ、指示されたこと以上の作業を行えるようになっていくでしょう。それが当たり前になる時代に、人間はどのように新たな価値を生み出していくのか、唯一の正解がない問題に対してどうやって向き合っていくのかが問われます。それを今、学校で学ぶ必要があると考えました。」

例えば、高1での「トゥワイスプラン・企業インターンワーク」では、企業からの指令を解決するビジネスプランを企画・プレゼンする。高2での「老舗企業・OB企業研究」では、2030年の未来社会を考えた商品の提案を行う。高3になると、KUBIC(関西大学ビジネスプラン・コンペティション)などの外部のビジネスコンペに参加したり、それまでの成果を論文としてまとめたりする。

アイデアを形にする学び

「『老舗企業・OB企業研究』では、2030年に向けた企業課題を考えて、プレゼンします。その過程ではSDGsが自然と視野に入ってきます。ビジネスを構想しながら、未来社会をよりよくし、地球を守ることへと意識が向かいます。この経験を大学でさらに深めて、未来のリーダーとなってもらいたい。」

日本には100年以上続く老舗企業が多い。長く存続してきたのには相応の理由があり、そこに経営の本質があるはずだ。例えば、近江商人の「三方良し」などは、時代を超えて通用する優れた考え方だろう。

「今年度から『起業×老舗』をテーマにする取り組みもはじめました。良い会社とはどのようなものか、その本質を考えて、将来の就職や起業を考える時に、既存の産業だけにとらわれず、新しい視点を持って欲しいと思っています。老舗からヒントを得て、新たな価値を生み出して欲しい。」

取り組みの成果として、今年、トゥワイスプラン・企業インターンワークの全国大会で、企業賞(大塚製薬賞)を受賞した。企業からのお題は「”人生100年時代”に生きる日本人の健康寿命を延ばすための、革新的な製品を企画提案すること!」だった。そこで、和食では過剰摂取になりがちな塩分を抑えるため、塩の味がする野菜アイスプラントを粉末や錠剤にして調味料にする製品を提案した。

「授業としては週1時間あるいは2時間ですが、生徒たちは昼休みや放課後にも集まってアイデアを出し合ったり、プレゼンの戦略を練ったりしています。とても楽しんで取り組んでいるようです。」

自分の興味がどこにあるのかを知り、場合によっては実験やフィールド調査もして、自分たちの未来を築くため、地球を守るために学ぶ。知的な楽しさがいつの間にか社会貢献や世界を救うことにつながっていく。若者が夢中になる学びとは、こういうものなのかもしれない。

 

進学館
甲南高等学校・中学校
http://www.konan.ed.jp/
芦屋市山手町31-3 TEL 0797-31-0551

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