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2020.10.30

頑張ってきたことや考えていることで勝負する——プレゼンテーション入試
親和中学校(兵庫県 女子校)

2020年以降の大学入試改革や次期指導要領で日本の教育は大きな節目を迎える。その一つが従来型の知識を覚えるだけの学習からの脱却だ。しかし、肝心の入学試験が知識だけを問うタイプのままでは、塾も学校も知識詰め込みを続けざるを得ない。今回紹介するのは、プレゼンテーションによって受験生の個性を測る親和中学校のプレゼンテーション入試。副教頭・広報部長の森上展宏先生にお話しいただいた。

 

多様な個性を伸ばす校風

2020年度、親和中学校が実施した「プレゼンテーション入試」は、解禁日初日午前に、入試科目としてはプレゼンテーションしか課さない入試として注目を集めた。この新しい入試方式を取り入れた理由を森上先生にたずねると次のように話してくれた。

「本校は、多様な個性を持った生徒がそれぞれの特長を生かして、多様な進路を選ぶ校風があります。その一方で入試方法が画一的で良いのか、というのは以前からの課題でした。そこで新たに『多様性特別入試』を実施しました。プレゼンテーション入試はその一つです。」

同校は、すでに「適性検査型入試」を実施していて、この入試方式にも多くの受験生が挑戦している。その実績があったことも新しい入試方式の新設を後押ししたという。

「適性検査型入試には、一般受験に負けない優秀な受験生が集まっています。彼女たちは自ら考える力に秀でている、という評価が教員の間にありました。これまでの入試では見つけ出せていない伸び代の大きい受験生はまだまだいるでしょう。そういう受験生に受けてもらうための新入試です。ちなみに、プレゼン入試で入学した生徒も一般入学で入学した生徒に遜色ない成績を修めています。」

単に受けやすい入試を新設したわけではない。塾で十分に受験勉強ができなかったが、潜在能力の高い受験生を見つけ出すことが狙いだ。そのため、この入試は十分な時間をかけて行われる。出願・受験までの流れは次の通り。

個別相談

模擬プレゼンテーション

2学期の成績確認

出願

受験

「想定している受験生は、直前まで中学受験を考えていなかった人、スポーツや習い事のために塾に通えなかった人などです。6年生1・2学期の成績を点数化して選考する(プレゼンテーション60点に対して国算理社の成績240点)ので、事前相談の段階で、一般受験を勧める場合もあります。」

 

受験生が成長する入試

模擬プレゼンテーションでは同校から講評が返される。受験生はそれを受けて入試本番のプレゼンテーションを磨き上げていく。その過程で、受験生に思わぬ好影響が見られたそうだ。

「いくつかのハードルを本人の努力や保護者との協力で乗り越えることで、受験生の成長につながる入試方式だと感じました。ほとんどの小学生にとって、60秒間とはいえ、自分の言葉で自分の考えを筋道立てて説明することは貴重な経験になります。」

話す内容を考えるのに保護者などが手伝うことは認められている。しかし、人の言葉を借りてそれを繰り返すだけでは気持ちは伝わらない。完成度の高さよりも、自分の気持ちを自分の言葉で伝えることが重要なのだ。プレゼンテーションの評価ポイントは次の点だという。

・はっきりと話せているか
・理由に説得力があるか
・話している時の気持ちの表現
・内容(主張はしっかりとしているか、どんな経験に基づいているかなど)

そして、この入試方式には、子どもたちの意欲を喚起するという思わぬ側面もあった。プレゼンテーション入試は「総合進学コース」のみの募集になっている。ところが、より難易度の高い「Sコース」に合格する実力のある受験生から「やってみたい」と相談があったという。単なる合格者選抜の仕組みを超えて、チャレンジしたくなる魅力のある取り組みなのだ。

「本校は創設以来、新しいことに次々とチャレンジする校風があります。これまでも生徒の個性を尊重して伸ばしてきましたが、より豊かな多様性を持った生徒が入学することで、学年全体にどんな好影響を及ぼすのか、とても楽しみにしています。」

 

進学館
親和中学校・親和女子高等学校
https://www.kobe-shinwa.ed.jp/
神戸市灘区土山町6-1 TEL 078-854-3800 (代表)

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