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2021.3.26

仏教×SDGsでユネスコスクール認定を目指す
神戸龍谷中学校高等学校(兵庫県 共学校)

 

気候変動問題や資源の問題など、地球規模での問題への対応が急がれる今日、学校で学ぶことが旧来の教科書に載っている内容だけで良いはずはない。子どもたちにも地球の持続可能性について知ってもらい、その学びを深めることが重要な課題となっている。仏教教育との相乗効果でESD(持続可能な開発のための教育:Education for Sustainable Development)に力を入れる神戸龍谷中学校高等学校を紹介する。

 

来るべき社会に備えた人類の課題

2015年、国際連合は「SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)」を掲げた。2030年までに達成すべき人類共通の課題として「貧困の撲滅」「教育の質向上」「ジェンダー平等」「クリーンで再生可能なエネルギー」など、17項目169ターゲットから成る。達成度は国ごとに客観的な数値によって評価される。

SDGsは、発展途上国でも先進国でも分け隔てなく、世界中の全ての人が目指すべき目標とされている。いわば21世紀を生きる地球市民に共通の義務だ。同校教頭・森功先生は次のように説明する。

「来るべきSociety5.0はAIと人間が共存する社会です。2030年、生徒たちが大人になるころには、さらに次のステージへと進んでいるでしょう。それに伴い格差などのグローバルな課題も拡大していきます。SDGsの十分な達成がなければ、社会は崩壊に向かうかもしれません。」

※Society5.0 狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く、新たな社会を指す。仮想空間と現実空間の高度な融合により、人間を中心に置き、経済発展と社会的課題の解決を両立する。内閣府の第5期科学技術基本計画において目指すべき社会の姿として提唱された。

 

新しい学びや国際交流への取り組み

同校は「和顔愛語のための5つのmission」の一つとして「ユネスコスクール」の認定を目指している。ユネスコスクールとは、SDGsについての教育「ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な発展のための教育)」を推進する学校のこと。認定されるためには、平和や人権などへの基本的な姿勢の上に、環境、経済、社会、文化の各側面から学際的かつ総合的に取り組んでいると認められる必要がある。認定されれば兵庫県の私立校として初の快挙だ。

「本校が数年前から重点的に取り組んできた課題探究型学習やアクティブラーニング、対等な立場に立っての国際交流・国際共同学習などは、ユネスコスクールの認定に足るものと自負しています。それらを再編して、さらに各教科の教科学習と連動させて、新たなスクールデザインのもと認定取得に挑んでいます。」

取り組みの一例を紹介すると、中学段階で卒業研究に取り組むなど調べ学習を充実させて、高校でリサーチリテラシーを発展させる。同時に異文化交流を実践(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどへの短期・中期・長期の留学)し、事前に考えたテーマに現地で得た経験を加えて、レポートにまとめプレゼンテーションを行う。

 

仏教×SDGs

「SDGsの『誰一人取り残さない』という理念は、まさに本校教育の土台である仏教に通じるものです。SDGsが持つ利他の精神や、単なる経済的成功よりも人間的な生き方や万人の共生を目指すところも仏教と抜群に相性が良い。そこで『仏教×SDGs』という講義を設けています。」

この講義では、まず、ICTツールを活用して、SDGsと仏教の基礎知識を理解する。学んだことをもとにレポートの作成などをしながら、生徒が自分たちにできるSDGsの取り組みを考え、提案する。優れた提案は学校代表として、8月に全国のグループ校が集まる全国大会で発表、議論される。2020年は新型コロナの影響で中止となったが、2019年の代表チームは「文具平等」と題して、余っている文房具を世界の子供たちと分かち合うプロジェクトを提案した。

「この講義を通して、『使いさしの文具を送るのは失礼ではないか』『だが、これが今自分たちにできる精一杯の貢献ではないだろうか』『このプロジェクトは持続可能だろうか』など、たくさんの正解がない問いに真剣に向き合っています。全国大会で、異なる視点からの意見をもらい、より洗練されたアイデアになると期待しています。」

 

とらわれていた虚構に気づき真実を生きる

「SDGsの講義や探究型学習を通じて、生徒はそれまでの価値観が自分の思い込みや既成概念にとらわれたものであったと気づくのです。『私の目には何枚ウロコがあったのだろう』と驚きを表した生徒もいます。本来、学ぶとはこういうことではないでしょうか? たとえば『どの宗教が優れているのか?』『どの人種が優れているのか?』と争うことには何の価値もありません。しかし、このような虚構の問いが世界を実際に動かすことがあります。生徒たちが虚構を超えて真実を見極め、真実を生きることが、本校の願いです。」

 

進学館

 

神戸龍谷中学校高等学校
https://www.koberyukoku.ed.jp/
(青谷学舎)神戸市中央区神仙寺通1-3-8 TEL 078-241-6417

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