大学入試の「明治以来の大改革」に伴い、中高の入試で問われる学力も大きく変化しつつある。武庫川女子大学附属中学校では、今春から「プログラミング入試」を新設した。この新しい入試方式について、入試対策部長・大﨑剛史先生に、導入の経緯や入試の狙いをお聞きした。
同校では、中学1年次から「データサイエンス類型」を設置して、プログラミング分野や統計分野に触れる機会をつくり、全員が楽しく学ぶことを進めている。さらに、高校2年・3年次に「データサイエンス類型」のクラスを選択し、より高度な分野への理解を深め、AI技術と統計学を駆使して、高度情報社会で蓄積されるビッグデータから新たな価値を見つけ出す素養を身につけることが可能だ。プログラミング入試には、この類型をより発展的なものにしたいという狙いがある。
「文系・理系を問わず、ビッグデータを使って、経済の動向や人の流れなどを分析することが、社会の色々な分野で行われるようになりました。現下のコロナ禍でもビッグデータの分析が現状の理解に役立てられています。また、武庫川女子大学は2023年度開設予定の社会情報学部を設置構想中です。」
データサイエンスの授業と聞いても、具体的な内容が思い浮かばないかもしれない。大﨑先生に尋ねると、分かりやすい例を挙げてくれた。
「例えば、ドローンをプログラムで制御して飛行させます。『飛んだ』『動いた』という感動がきっかけになって、その先の学びへと深めていくことができます。企業や他大学との連携も行い、学びのきっかけをたくさん用意しています。興味のきっかけは『ゲームを作る』ことでも良い。自分の好きなもの、興味を持てるものから可能性を広げて、楽しい未来を描き出せる生徒になってもらいたいという想いで取り組んでいます。」
データサイエンス類型の紹介動画
今春のプログラミング入試では、プログラミングの実技に加えて国語・算数の基礎学力も科目として設定していた。しかし、来年度のプログラミング入試は、前回の検証に基づき、国語・算数の科目を実施せず、実技のみとなる。
「そもそも、国語や算数で何を測っているのかというと『言葉を使った論理力』と『数式・図形を使った論理力』です。プログラミングには、この両方の要素が含まれています。例えば、ロボットを正五角形に沿って動かす、という課題は、正五角形の内角の角度からロボットを何度旋回させれば良いのかを考えなければ解けません。このように国語力も算数力も実技の中で見ることができると考えました。」
今春の実技の課題は、モーターで動くロボットを指示したコース通りに障害物を避けながらゴールまで動かす、というものだった。ゴールできた受験生とできなかった受験生とでは、プログラミングのスキルに大きな差があったという。
「昨年度は、実技対策として体験講座を実施しました。講座に参加した受験生は概ねゴールできていました。今年度は体験講座を開けませんが、代わりに動画を公開しています。来年度の実技対策のヒントがたくさん含まれているので、ぜひ視聴してください。」
時代の変化に応じて、プログラミングを中学入試に取り入れる学校は今後も増えていくだろう。私たち保護者は、学びの変化をどう捉えて、子どもたちをどう育てていけば良いのだろうか。
「どんなものでもそうですが、まず楽しむことが大事だと思います。楽しさの中から工夫や新たな思考が生まれて、より楽しくなる。その循環で学びが進んでいくのです。時代の変化が激しい中で、時代に取り残されるのか追い越せるのかを分けるのは、作ってみよう、もっと面白くしてみようという意欲です。それは、従来の教科でも教師が伝えようとしてきたことです。教材がロボットやゲームになっても、この本質は変わりません。」