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2022.3.18

アカデミズム・ジャーナリズム的な問題意識を問う 麻布中学校(東京都・男子校)

 

大学入試改革や新指導要領で日本の教育は大きな節目を迎えた。その一つの目玉は従来型の知識を覚えるだけの学習からの脱却だ。それに伴って、中高でも従来とは異なる基準の入試が模索されている。今回紹介するのは、麻布中学校の2022年度社会の入試問題。「こんなハイレベルの問題を小学生が解くのか」と話題になった問題だ。

4ページに及ぶ長文の資料

2022年度の麻布中学校の社会入試問題が、ハイレベルな思考力と幅広い教養を問うものだったと話題になった。いったいどのような問題だったのか見てみよう。

まず、資料となる文章は4ページに及ぶ。最初に、日本の国籍法についての説明があり、観光以外で中長期にわたって日本に滞在する外国人には5つの区分けがあることが説明される。

次に、近現代を「植民地支配と特別永住者(1890年代~1950年代前半)」「経済成長と外国人労働者(1950年代後半~1990年代)」「日本の難民政策(1970年代~1990年代)」「労働力不足の中で(2000年代以降)」の4つのテーマに分けて、近現代の日本が外国人を受け入れてきた歴史について記されている。

最後に現在の日本社会での外国人を取り巻く問題に言及して資料の文章は終わる。

 

知識詰め込みでは対応できない問題

この資料だけでも十分に読み応えがあるが、注目すべきは問いの内容だ。実際の出題の一部を以下に引用する。

日本に逃げて来た人たちの難民審査は厳しく、問題視されています。次にあげる資料1は審査のときにきかれる質問内容の一部です。日本政府がこのような質問をすることは、難民を保護するという点から見たときにどのような問題があると考えられますか。質問3~5から1つを選び、その質問の問題点を説明しなさい。
(麻布中学校 2022年度入試問題 社会 問い9より抜粋)

日本に働きに来た外国人とその家族の人権を守るためには、どのような政策や活動が必要だと考えられますか。君が考える政策や活動の内容とそれが必要である理由を、80~100字で説明しなさい。
(同 問い13より抜粋)

これらの問いは、与えられた資料から問題点を考えるものだが、ポイントは正解が一つではないというところ。難民や外国人労働者の問題は、教科の知識だけでは解くことができない。普段から問題意識を持って社会について考えていること、広く実社会とリンクした幅広い知識、それに加えて人が国境を越えて生活しなければならないさまざまな事情・困難に対する想像力も試される。

 

家庭での対策も大切

同校は、骨太な自由尊重の校風で知られる。戦前には国家主義から巧みに学校を守り、戦後も、校則がなく、在校生保護者に徹底して情報公開するなど、その校風が受け継がれている。

首都圏の私立中高事情に詳しい森上教育研究所の森上展安さんによると「学校文化を入試で示そうとする『入試からの教育』には、男子御三家がその筆頭に挙げられます。以前は麻布、武蔵のこうした学校文化がよく取り上げられていましたが、20年ほど前に開成が入試改革に踏み切り、後に続きました」とのことで、アカデミズムやジャーナリズムの問題意識が入試に顔を出すことも珍しくない。

麻布は以前にも理科の入試問題として、コーヒーの入れ方を科学的に考える出題や、ドラえもんがいかに優れた技術であっても生物とは認められない理由を考える出題などが話題になったことがある。

このような出題への対策を尋ねると「4年生ぐらいから夕食時などに時事問題について家族でディスカッションをしたいところですが、現実的には難しいと思います。塾で出題傾向に慣れて、家庭では、親子でニュースについて話をすることや調べ学習をするようなことが対策になるでしょう」とのアドバイスをいただいた。

※首都圏男子校の中で人気・実力・伝統を兼ね備えた3校(麻布、開成、武蔵)

 

進学館

 

麻布中学校・麻布高等学校
https://www.azabu-jh.ed.jp/

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