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2022.8.19

公立IB校の一期生が海外大学8名合格の快挙
大阪府立水都国際中学校・高等学校(大阪府 公立校)

9月完成予定の新校舎

全国初の公設民営学校として2019年4月に開校した大阪府立水都国際中高。公立の国際バカロレア校としても期待を集めていた。2022年春、高校一期生が卒業し、注目されていた進路が公表された。その結果も含め、一期生の様子などを進路指導主事・郭山植先生にお聞きした。

 

公立IB校一期生の実績

水都国際高校の一期卒業生72名のうち、海外大学合格はのべ8名。IB(国際バカロレア)コース14名+科目Certificate取得者7名の21名中では、6名合格(進学5名)という高い海外大学合格率だった。のべ8名の実績は次の通り。
(7月31日時点判明分、括弧内の数字はTHE世界大学ランキング2022

University of Melbourne(33)オーストラリア
The University of New South Wales(70)オーストラリア
Tilburg University(201-250)オランダ
University of the Philippines(601-800)フィリピン
Dundalk Institute of Technology アイルランド
Monash University Malaysia マレーシア
Orange Coast College アメリカ
Saint Mary’s University of Minnesota アメリカ

THE世界大学ランキング
参考:東京大35/京都大61/大阪大301-350/慶應義塾大601-800

「他校の例では、海外大学進学者は成績トップ層に多いと聞いていましたが、本校ではそういう傾向はなく、日本的な評価方法では幅広い成績から進学者が出ました。生徒が自らの判断で『海外の方が自分に合っている』と考えて、積極的に行動した結果だと思います。」

海外進学を選んだ生徒の共通点を尋ねると、郭先生はこう答えた。成績も得意分野もバラバラの生徒たちだが、個性が光り、行動力に優れる、というのが共通点だったという。

 

海外進学の実際

「一期生ということで、学校側も手探り状態での指導でした。一人ひとりのニーズに合わせて、個別的に情報を提供し、生徒たちも自分で海外大学のことを調べてきて、話し合いながら志望校を絞っていきました。私たちにとっても勉強になりました。」

一期生の海外大学への進路指導には、多くの苦労があったようだ。優れた大学は世界中にあり、全ての国の入試制度を把握して指導するのは難しい。だが、一期生が道筋をつけたことで、次年度以降は、同じ国、同じ大学であれば、指導はずっとやりやすくなる。一方で、今後も高いハードルであり続ける現実的な問題がある。

「生徒が海外進学を諦める大きな理由は、やはりお金の問題です。大学や企業の奨学金プログラムを使わなければ、海外進学は現実的ではありません。そこで、企業のプログラムを利用できるように、中学段階から企業のガイダンスに参加して、早くから準備できるようにしています。」

もう一つの現実的な問題は、海外大学を志して努力してきたものの、それが叶わなかった場合、どのような進路が考えられるのか、ということだ。

「IBコースの生徒の場合、国内の大学にはまだIBについての理解が十分に浸透していないという実情があります。海外では、IBのスコアを持っていると科目試験が免除される場合が多いのですが、国内では、IBのスコアが使える大学でも、大学入学共通テストを受験する必要があるなど、生徒の負担が大きくなります。」

IBは国際的に通用する大学入学資格だ。しっかりと成績を修めていれば、大学に入学できる学力があるとみなされる。その分、高度な学習が求められ、必修カリキュラムTOK(知識についての探究)、CAS(創造性・活動・奉仕に関する取り組み)、EE(課題論文)への取り組みは想像以上に忙しい。同校生徒が取り組んだCASには、ATCの技術見本市での環境問題についてのポスター発表、釜ヶ崎での生活支援NGO活動への参加などがある。いずれも準備、作成、提携先とのやりとりまで入れると数ヶ月から半年に及ぶ活動だ。

ATCでのポスター発表

「海外大学の入試では『どんなことをやってきたのか』『これから何をしたいのか』が問われることが多いのですが、本校の生徒は、CASの中で、大学に提出できる材料をいくつも見つけることができます。この材料は、国内大学の総合型選抜でも有利になります。」

国内でも、筑波大学、金沢大学、広島大学、岡山大学、上智大学など、IBスコアを正当に評価する大学が増えている。また、北海道大学の国際総合入試のようにIB生が有利な入試も今後増えていくだろう。

 

2022年9月新校舎完成

同校は市立小学校2校の跡地に開校した。今年までは旧校舎が転用されていたが、近々、新校舎増築工事が完成する。新校舎には、普通教室の他、グループ学習、プレゼン発表、教職員・生徒の打ち合わせ、自習、課外活動等に活用できる「Co-Lab Space」が各階に複数教室設けられる。独自の取り組み「Suito Action Project for SDGs 」でのグループ学習やプレゼンテーションでの活用が期待される。

新校舎の凹凸のある部分がCo-Lab Spaceになる予定

 

進学館

 

大阪府立水都国際中学校・高等学校
https://osaka-city-ib.jp/
大阪市住之江区南港中3丁目7-13
TEL 06-7662-9600(中学)06-7662-9601(高校)

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