2021年度から中学校で、今年度から高等学校にて新しい学習指導要領がスタートした。その中で「学びに向かう力」が身につけるべき学力として教育の柱の一つとなった。今回は、放課後の自主学習をICTを使ってサポートする金蘭千里中学校・高等学校の「勉強部」を紹介する。教頭の中村聡太先生にお話を聞いた。
本当の学力は自主的に学ぶ力
金蘭千里中学校・高等学校には「勉強部」という取り組みがある。「放課後に有志で集まって勉強をする部活?」と思った方、その印象はそれほど外れてはいない。ただ、単なる生徒有志の集まりと異なるところは、オンラインなので実際に集まる必要がない点と、学習をサポートする体制が整っている点だ。
「完全下校時刻18時までは責任を持って生徒の学習を見ることができますが、それ以降の学びにはこれまで目が届きませんでした。学力の伸びにとって最も重要なのは『自分にとって必要な学習に自主的に取り組む習慣』で、この習慣づけを何とか手助けできないかと考えていました。」
勉強部設立の経緯について中村先生はこのように説明する。同校は、コロナによる臨時休校期間にiPadを活用したオンライン授業にいち早く取り組んだが、その時に対面授業の良い面を改めて認識すると同時に、iPadにはもっと学びを支援できるポテンシャルを感じたという。
「本当の意味での学力をどうすれば身につけられるのか、というのは本校の使命としてずっと考えてきたことでした。自主的な学習習慣を身につけさせたいからといって、まさか教師が生徒の家にお邪魔して勉強を見るわけにはいきませんし、学校に夜遅くまで残すのは自主独立を旨とする本校らしくありません。そこで、iPadを使って家庭学習を後押する構想が出来上がりました。」
カウンセリングで目的意識をしっかりと持つ
勉強部の活動は、月~金が17時~22時、土曜日が15時~21時。この時間内で各自の必要に応じて参加する形だ。使いたい生徒は、自習管理者と相談して、学習スケジュールや進度予定を決める。そして、使用する時にはオンライン指導員が毎回カウンセリングを行い、今日はどこを勉強するのか、どんな目的を持って取り組むのか、などを話し合う。この指導員にはわからない箇所があった時に質問をすることもできる。運営についてはスクールTOMAS社に委託しているが、任せっぱなしではなく、同校にも勉強部の担当教員を2名配置して、さらに管理職も関わって、定期的に学校側の要望を伝えたり、随時学習状況を共有したりしている。
「生徒の利用目的は、宿題をしたり、20分テストに向けた勉強をしたりと様々です。中3になって今まで2年間サボってきたことを反省して、中1のカリキュラムから復習するというような使い方も見られます。オンライン指導員は大学生・大学院生で、中には本校卒業生もいます。生徒にとっては身近で頼れる存在のようで、卒業生のアドバイスや経験談を聞いて、学習に意欲的になる生徒も少なくありません。」
家庭学習の把握でより適切な指導へ
また、AIを活用した個別最適化学習「atama+」も取り入れている。問題集を解いていくことで、正答・誤答のデータを蓄積し、AIが生徒一人一人の弱点を見抜くようになる。必要な場合は動画による解説へと誘導する機能も持つ。このAI教材「atama+」はスクールTOMAS社が管理・運営する。
「これまで漠然としか把握できていなかった生徒一人一人の家庭学習状況が、より詳細にわかるようになりました。今後、どのような自習が生徒を伸ばしているのか、分析を進め、適切な学習支援に繋げていきます。近年、iPadを活用した学び方はどんどん新しい方法が出てきています。本校でも変化を恐れず、常に新しい学びの可能性を模索したいと考えています。」
保護者からの評価も上々
勉強部の取り組みは、保護者からも好評のようだ。以下に、保護者の声を紹介しよう。(同校資料より抜粋)
「以前に比べて時間の使い方や意識が改善されました」(中3)
「勉強部に入ってから、少しずつではありますが、帰宅後の勉強リズムがついてきているように思います」(中3)
「先程の面談ではとても丁寧に細かく指導して下さりいっそうやる気が出たように見えました」(高1)
「中学生にもなれば、もう親に細かく口出しさせてはくれません。干渉しない方がよいとも思いますので、勉強部の先生方にしっかり伴走していただけると大変ありがたいです」(中1)