MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビTOPICS

2023.3.31

自発的・協働的に学び、外に向かって考えを伝える——未来学プロジェクト
親和中学校・親和女子高等学校(兵庫県・女子校)

 

合同探究発表会

 

2022年度に高校でもスタートした新しい学習指導要領では、探究学習が正規のカリキュラムに組み込まれた。今回は、早くから探究学習に力を入れてきた親和中学校・親和女子高等学校の探究学習「未来学プロジェクト」を紹介する。探究推進部長の大橋宏記先生にお話しを聞いた。

外部に発表する経験

 昨年度、新学習指導要領が本格実施され、全国の高等学校で「探究」が正規のカリキュラムとなった。それ以前から探究学習の重要性に着目していた親和中学校・親和女子高等学校では、2015年度開設の「Sコース」を探究学習に力を入れるコースとして設計。5年前からは独自の探究の授業「未来学プロジェクト」に取り組んでいる。

「生徒たちは将来、グローバルな世界で生きていくことになります。その時に、自主的に、かつ協働的に行動する力、自分の主張や意見を外に向けて、わかりやすく伝える力が必ず必要になるでしょう。先輩・後輩といった身内だけではなく、異なるコミュニティの人たちに発表する機会をたくさん作りたいと考えました。」

 大橋先生は未来学プロジェクトの狙いについてそう話す。「未来学プロジェクト」は週に1時間、Sコースでは2週に1回2時間の授業を行う。SDGsに関連することからテーマを選ぶとしているが、あくまでもそれは考えるためのきっかけで、生徒が興味を持ったことには制約を設けず、事実上自由にテーマを決めている。SDGsは広い分野をカバーするため、結果的にいずれかのゴールに関連する。

 

学校を挙げての探究への取り組み

 特筆すべきは、同校がまず「Sコース」から探究に力を入れてきた点だ。「Sコース」は他校の特進コースのような位置付けのコースである。学校のフラッグシップとなるコースに敢えて新しい学びを率先して取り入れ、その成果を他のコースに波及させるという手法に、探究学習への本気度が伺える。

「Sコースの生徒たちをさらに伸ばすことを考えた時に、目先の大学入試の点数よりも、将来、社会に出た後で活きてくる力の基礎を作ってあげたいと思いました。中学ではSコースを中心に、高校では全ての生徒に、この学びに取り組んでもらいます。」

 さまざまな調査で探究の学力と、大学受験の学力とは相関があることがわかっている。また、探究学習にしっかりと取り組むことは総合型選抜で有利になり、結果的に進路選択にもメリットをもたらす。

「生徒の反応はとても良く、楽しそうに取り組んでいます。自ら興味を持ったことを通して、新しいことに挑戦しようとする生徒も増えてきました。日本とフィンランドの女性議員の割合を探究のテーマにした卒業生は、将来議員になるかも、と話してくれました。」

中1で取り組む学校紹介動画の作成

 

探究を軸にして広がる学び

 テーマの一例を紹介しよう。「ウクライナからの避難民の生活に対して私たちができること」というテーマを掲げたチームがある。生徒たちは、ウクライナ戦争を受けて「何かしたいけれど、自分たちに何ができるのかが見えない」という状態からスタートした。だが、大学で研究者の話を聞き、日本に避難している学生の気持ちを汲むことで、同じ年代の学生として、自分たちにできることを見出した。それは、お互いの言葉を教え合ったり、ウクライナ料理を作ったり、踊ったりするような交流会を開く、ということだった。避難民に必要なのは同情されることではなく、対等の関係での交流だというのがこのチームが到達した答えなのだ。

「どちらかと言えば大人しい生徒たちでしたが、自発的に動いて、交流会の開催まで持っていこうとしています。最初はウクライナに関する知識などほとんどなかった生徒が、探究を通して、さまざまな分野の知識を学び、それらの知識を融合させて、新しいアイデアを生み出しています。」

 去る2月17日、デザイン・クリエイティブセンター神戸にて、親和女子、神戸龍谷、滝川、仁川学院の4校による合同探究発表会が開かれた。4校から計128チームがポスター発表する大規模なものだ。

「高2のSコース生は、全員が外部のコンテストで発表します。中には英語で発表をするものもあります。多くの学校で探究学習をどうしようか悩みながら進めているようですが、SSHやSGHの指定校でなくても、十分に高いレベルの探究学習は可能です。この5年間で、当初、探究に戸惑っていた先生方の意識も大きく変わりました。これからは、未来のワタシに向かっていく生徒と教師の成長が楽しみです。」

 

進学館

 

親和中学校・親和女子高等学校
https://www.kobe-shinwa.ed.jp/
神戸市灘区土山町6-1 TEL:078-854-3800 (代表)

Category カテゴリ―