平井正朗校長のもと学校を挙げての大改革に取り組んでいる神戸山手女子。進学満足度やクラブ活動などで、早くも目に見える成果が上がっている。その原動力となっているのが、新しい学びの数々だ。今回はその一端として、21世紀の新しい部活動であるデータサイエンス部と新たに併設されたe-Sports部を紹介する。
時代が変われば放課後の活動も変わる
——40台のハイスペックPCが並ぶ部屋で、部員たちが画像や動画を編集したり、e-Sportsの練習に取り組んだりしている。他にも、3Dプリンタで自作の造形物が出力され、12台のLEGOマインドストームを組み立てて、それを制御するプログラムを考える。
皆さんは、この文章からどんな光景を想像しただろうか? 大学の研究室? IT企業? どちらでもない。これは中学生・高校生の部活動。神戸山手女子が新設した「データサイエンス部」の活動風景だ。
「学習指導要領の改訂、大学入試改革など、教育を取り囲む環境が大きく変化する中で、コロナ禍も重なり、世の中がめまぐるしく変容しています。まさにこの時期に学校改革をスタートさせた本校では、グローバル化、DX化に対応する様々な取り組みを具体化し、その中の一つとしてデータサイエンス部を新設しました。」
平井校長は部の設立経緯をこのように説明してくれた。社会が変容し、学び方も変わる。当然、生徒が身につけるべき力も、興味を持つ対象も変わっていく。そうすると、それに応じた部活動も必要になってくる。
興味を持つこと楽しいことを伸ばす教育
データサイエンス部は、2023年3月現在、中学生6名、高校生4名の計10名で活動している。普段の取り組みとしては、年3回実施する小・中学生対象のプログラミング教室や、年9回の動画編集教室などの各イベントでのアシスタント・コーチをつとめたり、3Dプリンタ(3D CAD)を使って、InstagramやYouTubeの演出で使用する造形物を設計・制作したりする。他にも、グリーンバックや全身グリーンタイツなどを使って動画を合成する本格的なトリックビデオの制作など、さまざまな動画撮影技法にもチャレンジしている。
「外部との連携も活発に行なっています。友松会(同窓会)のご支援により、卒業生が経営する企業やお店を訪問し、卒業生の活躍をInstagramで発信する機会を得ることができました。生徒たちは、この撮影・編集を通して、社会に通用する力とは何かを実感できたと思います。」と同校長。
他にも、関西国際大学社会学部の大学生と「2050年の防災・減災に必要な準備」について、尼崎市役所にてワークショップ形式で学び、その中で学んだことを、データサイエンス部と広報部が、大学生の協力の下、動画を撮影・作成し、それを発表する取り組みも行った。
動画を作成したり、SNSで発信したりするスキルは、今の時代、コミュニケーション力の大きな一部を成す。企業はもちろん、公的機関でさえも、広報や情報発信に活用している。保護者の世代から見ると、遊んでいるように見えるかもしれない。しかし、これからの時代を生きていく子どもたちにとっては大切な学びなのだ。何より、原点に立ち返れば、教育の重要な役割は、生徒が興味を持つこと、楽しいと思えることを伸ばすことにある。同校の新しい部活動は、その原点に立ち返っている。
最後に、受験生に向けて、データサイエンス部のアピールをお願いすると、クラブ顧問の先生は次のように答えてくれた。
「データサイエンス部では、生徒一人ひとりのそれぞれが活躍できるフィールドで生き生きと活躍していってもらいたいと考えています。部員同士が尊重しあって、自分の得意な分野に集中して行うことができる部です。本校のデータサイエンス部に入って、好きなことや長所を伸ばしてみませんか?」