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2023.8.11

学んだことを深めて実践して振り返る——創造コース
追手門学院高等学校(大阪府・共学校)

 

 

2022年、追手門学院高校で「創造コース」がスタートした。「自分を創造するコース」として、自らがどんな人間なのかを知り、教師主導ではなく、自ら将来を選ぶ生徒を育てることを目指す。同コースの考え方や取り組みについて、創造コース教育推進部長の牛込紘太先生にお話を聞いた。

学びの楽しさを取り戻す

 「創造コース」は、従来の学校の学び方を一から見直し、学びが本来持つ「楽しさ」を取り戻すことを目指して開設された。学期ごとに学ぶ概念が掲げられ「真(アンラーン:当たり前を疑ってみる。クリティカルな思考力を持つ)」、「善(応用:他者や社会を意識して、自分の善悪の基準を考える)」、「美(判断:唯一無二の「自分軸」を持ち、ゼロから創造する)」が各学期のテーマとなる。

「『教科の学び』→『学びを深める』→『学びの統合』→『学びの振り返り』のサイクルで学びを進めます。教科の授業ではグループ形式を多くとり、探究的な学びを重視しています。たとえば、数学では『あなたを確定させる条件』を書き出して、自分を定義するにはどうすればよいのかを論理的に考え、歴史総合では、ある出来事に対して原因がたくさんあることを調べて、それを基にスゴロクを作って遊ぶという授業を行いました。英語では『eスポーツはスポーツか?』というテーマでディスカッションをし、検証するためにオリジナルのスポーツを作って実際にプレイしました。」

第二次世界大戦を題材にした歴史スゴロク

 牛込先生が「創造コース」の授業の実例を挙げてくれた。特にユニークなのは化学基礎だ。基本的に実験から始め、考察、解説をつけていく。実験に取り組み、生徒から疑問が出てくれば講義が始まる。机上の知識から入る従来の授業とは真逆の進め方だ。

 

定期考査に代わるプロジェクト実践

 次の「学びを深める」には主に、週1回のLHRが使われる。

「LHRでは、概念と教科をつなぎます。『この学びはこういう意味があるのか』と生徒が自発的につながりを見出すことを重視しています。たとえば、『見えているものはどれぐらい確かなのか?』などの問いを投げかけて、授業で学んだことと関連させて考えたり、何かを伝えるときにその意図が伝わっているのか、言わなくても意図が共有されていると思い込んでいないか、などを考えたりします。」

 探究的に学び、それをLHRでさらに深める。これだけでも従来の学校とは異なる進め方だ。しかし次の「学びの統合」は従来の常識をさらに大きく覆す。

「『学びの統合』では、各学期の中間、期末に定期考査の代わりにプロジェクト実践に取り組みます。2年生の1学期中間プロジェクトでは『ルールメイキング』に取り組みました。クラスのルールをどのようにするのか、一人ひとりが考えてプレゼンします。決まったルールは実際に運用することも検討しています。」

 中間・期末考査の代わりだが、プロジェクトに成績はつけない。点数が目的になると模範解答を目指すようになってしまうからだ。ただ、よいプレゼンとはどのようなものか、生徒が自分たちで考え、自分たちの中でより高評価と思われるものへと改善するようにしている。この自発的な改善によって、プレゼンの質が劇的に向上するそうだ。

生徒は自発的によりよいプロジェクトへと高めていく

 

学びの振り返り——リフレクション

 サイクルの最後は振り返り(リフレクション)。プロジェクトごと、LHRの時間や教科でも振り返りをして、さらにはICTを活用して気づいた時に生徒が書き込みをする。

「学びを振り返ることで、考えと学びについての気づきを得ることができます。振り返らずに進めると、取り組んでいる中で出てきたアイデアやアウトプットなどが、なぜそう考えたのかわからないままになってしまいます。振り返って考えることで自分の中で起こったことを理解できるのです。」

 学びの結果、自分の中で起こったことこそが成長である。そして、この成長をもって次の学びへと進む。新しい学び方に生徒は戸惑っていないのか尋ねると、次のように話してくれた。

「もともと本コースを希望して入学してきた生徒たちなので、すぐに順応できて、生き生きと学んでいます。この学びのサイクルを進めていくと、突き抜けた生徒がどんどん出てきてくれそうで、とても楽しみです。」

 

開進館

 

追手門学院中・高等学校
https://www.otemon-jh.ed.jp/
茨木市太田東芝町1-1 TEL 072-697-8185

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