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2023.12.22

ゲームでプログラミングも探究学習も人間力も——マインクラフト部
大阪府立 水都国際中学校・高等学校(大阪府 公立校)

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遊ぶこと自体が学びになり、深めれば優れた教材にもなると教育関係者の間で話題のゲームをご存知だろうか? 『Minecraft(マインクラフト)』(Mojang Studios、Microsoft)だ。ゲームの中で自由に建築ができたり、プログラミングを使って創造的な遊び方をしたりと、中高生にも人気のゲームで、クラブ活動にする学校もある。今回は、2023年のMinecraftカップで全国大会出場を決めた水都国際中高のマインクラフト部を紹介する。顧問の芦部洋一郎先生にお聞きした。

遊んでいるだけで学びになる

 ICT教室に入ると、正面の大きなスクリーンに『マインクラフト(以下、マイクラ)』のゲーム画面が表示されていた。まずい、見つかった……とはならない。何しろ、ここはマインクラフト部。学校でゲームというのは、一昔前であれば禁止行為だったが、マイクラの登場はその状況を変えた。

「マイクラは、遊んでいるだけでもプログラミング能力や空間把握能力を養う優れた教材です。その上で、ゲームへの興味を起点に、外部のコンテストや社会貢献へと広げて、さらに教育効果を高めることが、私たちの役割だと考えています。」

 顧問の芦部先生が、ゲームと教育のこれからのあり方を話してくれた。数学科主任でもある先生は、ご自身もマイクラを愛好していたが『教育版マインクラフト』の登場や、海外で教材として活用されている事例などに触発されて、同校でも使えるのではと考えたという。

「きっかけはコロナ禍でした。一斉休校を受けて、生徒は自宅でオンライン授業となりました。時間を短縮しての授業で、生徒に余裕がありましたので、この時間にオンラインでできる活動はないかと最初に取り組んだのが、マイクラで協働して建築することでした。」

 この活動が現在の前身となった。その後、プロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏からの提案で、特別支援学級の生徒のためのワールド教材を制作。特別支援学級の生徒は、言語によるコミュニケーションが得意ではないが、ゲームを使えば連携した作業に取り組める。そこに着目して、協力することで先に進めるゲームをマイクラで構築した。この取り組みがあって、有志の集まりから公認の活動となった。

探究学習との相性も抜群

 普段の活動の主な目標はMinecraftカップへの出場だ。今年の大会のテーマは「誰もが元気に安心して暮らせる持続可能な社会 ~クリーンエネルギーで住み続けられるまち~」。このテーマに沿った作品を作るため、生徒たちはまずゲーム画面から離れて、現実世界に飛び出す。

「8月末の作品提出に向けて、5月ごろからずっと作品制作に取り組みますが、最初は、商店街やエネルギー関連企業への取材とリサーチを行いました。それから自分たちの考えをまとめて、マイクラの世界に戻ります。今年の作品は、川崎重工株式会社から助言を得て、水素エネルギーを活用した、発電所や水素ステーションのある町のモデルを作りました。」

 3年間の活動が実り、2023年のMinecraftカップでは見事に近畿ブロックで最優秀賞を受賞。来年2月の全国大会への出場権を得た。全国大会での審査には、先述のタツナミシュウイチ氏が審査委員長を務めるほか、マイクラを使った動画配信が人気のカズ氏も参加する。

「他にも、地域の子どもたちに向けて、マイクラを使ったワークショップも行っています。ゲーム画面から外に出て社会と関わることで、よりマイクラを好きになり、日々の活動をさらに楽しめるようになると考えています。」

 まさに探究学習そのものだ。ATCで小学生を対象に開催したワークショップは好評で、今年は保護者と小学生合わせて200人弱の参加があった。他にも、各自が自由に作品を作り、仲間内で発表会を行うこともある。冒頭に紹介した光景はその時のものだ。

作品発表会にて(髙松永遠さんの作品)

人間関係を豊かにし人間的な成長ももたらす教育ツール

——ここはいつも賑やかで、やりたいことを提案すれば、先輩方が一緒に考えてくれます。(佐々木然さん 中1)

——マイクラを通して、何かをやりきる力、継続力が身についたと感じています。(髙松永遠さん 中3)

——マイクラには、自分自身の知識が増えて、できるようになる楽しさがあります。これからも新しいものに挑戦してワクワクできるものを作りたい。(桑原結生さん 高1 部長)

プログラミングで新しい遊び方に挑戦(桑原結生さんの作品)

 これらは実際の生徒たちの声だ。マイクラを通して、人間関係が豊かになり、人間的に成長している様子がわかる。今や学校はゲームを禁止している場合ではない。子どもたちが楽しみながら学び、成長していくツールが登場したのだ。教育がそれを活用しない手はない。

 

大阪府立 水都国際中学校・高等学校
https://osaka-city-ib.jp/
大阪市住之江区南港中3-7-13
TEL 06-7662-9600(中学)06-7662-9601(高校)

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