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2024.5.24

生徒の興味を起点にし自由に展開する授業——探究アウトプットタイム
常翔学園中学・高等学校(大阪府・共学校)

新しい時代の学びは生徒中心であることが求められている。しかし、現実にはなかなか生徒中心の授業を実現できず、多くの学校が苦慮している。そんな中、今回紹介するのは、常翔学園がSTEAM教育の一環として取り組む、生徒中心の学び「探究アウトプットタイム」。実際の授業を見せてもらった。

 

興味にもとづいて選ぶ4つのゼミ

——先生、こんなのどうですか?

——見てください。可愛くないですか?

 「探究アウトプットタイム」の時間が始まると、生徒たちから次々とアイデアやラフスケッチが上がってくる。教員の側も一緒に楽しみながら、生徒の思いを汲みつつ、よりよい探究・作品となるようにフォローする。自由な雰囲気は大学の研究室やゼミを彷彿とさせる。

「従来の授業の枠組みをできるだけ取り払い、生徒が好きなことに挑戦できて、失敗をしてもいい時間を作りました。現代の子どもたちはあまり失敗をさせてもらえません。好奇心をもとに、疑問を持って深く突き詰めていく経験が、これからの時代、中高に求められていることだと考えました。」

 入試部長の花本圭史先生がこの取り組みを導入した狙いを教えてくれた。「スーパーJコース」中2・中3の取り組みで、週1回、1時間半の授業だ。中1の3月に、先輩たちのプレゼンを聞いてゼミを選ぶ。「ロボットプログラミング」「デザイン探究」「サイエンスチャレンジ」「水圏環境探究」の4つのゼミがある。花本先生は水圏環境探究ゼミの担当でもある。

 

思いつきをどんどん発言する自由な授業

 取り組む内容は、それぞれのゼミのテーマから外れていなければ自由。たとえば、サイエンスチャレンジゼミであれば、科学的なことであれば何をしてもいい。ずっと同じことを突き詰める生徒もいれば、どんどん新しいことにチャレンジする生徒もいる。

「私たちの方から探究の内容を指示することはありません。ただ、アウトプットを重視しているので、発表はしてもらいます。成果に関してもノルマはなく、『挑戦したけれど、失敗しました』という報告でも良いのです。」

 サイエンスチャレンジゼミを担当する持田政治先生が、この授業の自由さを説明してくれた。取材した日は、各自の探究テーマのプレゼン資料づくり。生徒とのやりとりはまさに自由で、冒頭のように生徒から次々とアイデアが出てくる。先生も生徒の興味や思いつきを決して否定せず、出てきた芽を伸ばすように対応していた。

 

単なる楽しいから真剣な学びに

 デザイン探究ゼミでは、中2生が自分たちで考える制服のデザインに取り組んでいた。現在の制服の問題点をアンケートなどで洗い出して、他校やフィクションに登場する制服のデザインなどを参考に、理想の制服を考える。

「3年生はゲームデザインをするチーム、自習室の空間デザイン、一人暮らしの部屋など、幅広いテーマに自由に取り組んでいます。自由に好きなことに取り組めるので、生徒は授業を楽しみに来てくれます。待ちきれずに、早く教室を開けてくださいという勢いです。」

 制服をデザインするチームが落書きを始めると、その流れを遮ることなく「常翔学園のマスコットキャラクター」のデザインが始まった。生徒も自由だが、ゼミを担当する藤田凪歩先生も負けずに柔軟だ。最初は遊び感覚で描きはじめた生徒たちだが、徐々に熱が入り、同校のシンボルであるフーコーの振り子とフクロウを組み合わせたキャラクターや、振り子そのものをキャラクターにした案などが出てきた。

デザイン探究ゼミ

 ロボットプログラミングゼミの岡本正夫先生は「知的好奇心が旺盛で、少しヒントをあげるとどんどん学びを進める」と生徒を評していた。最初は、ロボットカーに触って遊ぶところからスタートし、3年になるとより高度にロボットを制御しようとプログラミング言語の習得に取り組むようになる。

 

制限をなくせば本来の力が発揮される

「やりたいことに制限をかけられないことで、生徒は本来持っている力を存分に発揮します。教科書を見て覚えるような学びとは違い、実際に自然環境を体験することで、より身近なものとして見ることができるようになったと思います。それまでぼんやりとしていた生徒の興味の焦点が、自分たちで調べたり考えたりすることで強固なものになっていきます。」

 生徒の成長をたずねると、花本先生がこう答えてくれた。担当の水圏環境探究ゼミは水辺でのフィールドワークにも取り組む。同校のすぐ北隣は淀川の入江である城北ワンド。そこには天然記念物のイタセンパラが生息するなど、独自の生態系がある。

「城北ワンドには、ブラックバスなどの外来生物もいます。外来の生き物をどう扱うかは難しい問題です。たとえば『駆除するのはかわいそう』と思うのであれば、どのような共生を目指すのかまで深めなければなりません。まずはフィールドに出て実際に調べるところから始めることが深く学ぶ第一歩になると考えています。」

 

いずれ教師の出番がなくなる

「日程や目標などを伝えると、生徒が必要な資料などを自分たちで作り上げてきます。教師はいずれ出番がなくなるのではないかと思っています。話を聞いてあげたり、背中を押してあげたりするのが私たちの仕事になってきました。」

 花本先生、持田先生が声を揃えて示したのは、どんどん生徒が主役になっていく同校の学びの姿だった。取材で強く感じたのは、生徒の自由な興味・関心を頭ごなしに否定しない先生方の柔軟さだ。生徒中心の学びを実現する鍵は、まず生徒の考えや思いを肯定することにあるのかもしれない。

 

進学館

 

常翔学園中学校・高等学校
https://www.highs.josho.ac.jp/
大阪市旭区大宮5-16-1 TEL 06-6954-4364

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