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2024.7.26

自らデザインした未来へはばたく2つの新コース
武庫川女子大学附属中学校・高等学校(兵庫県・女子校)

高校探究活動

学習指導要領の改訂もあり、探究学習の重要性が広く認識され、教育活動として実践されるようになった。その中で、多くの学校で課題となっているのは、その学びを大学生や社会人になった後にどうつなげていくのか、という点だろう。武庫川女子大学附属の新しい2つのコースでは、大学との連携を通して社会にもつながる探究学習に取り組んでいる。入学対策部部長の網本勝喜先生にお話しいただいた。

 

新たにスタートした2つのコース

 2024年度、武庫川女子大学附属では「SOAR探究コース(以下、探究コース)」「SOARグローバルサイエンスコース(以下、GSコース)」の2つのコースがスタートした。「SOAR」は「空高く上昇する、飛翔する」といった意味があり、新コースの目指すところは「自らデザインした未来へはばたく」とされている。

「従来の英語とサイエンスといった文理での分け方を見直して、文理の枠にとらわれないコース制としました。どちらのコースも土台となるのは探究的な学びです。GSコースはその土台にSSHを継承した専門的な学びをプラスアルファしたイメージと思ってください。」

 網本先生が新コースの概要を説明してくれた。どちらのコースも探究活動がベースとなるため、中学段階ではコース間で取り組みに大きな差はない。高校以降、GSコースでは高2でグローバルかサイエンスかに分かれていく。探究コースでは、武庫川女子大学の経営学部・教育学部と連携して探究学習を深めていく。

「探究コースの大学との連携では、いくつかのテーマに分かれます。経営学部では大手企業や世界的ソフトウェアメーカーと、教育学部では実際の教育現場と、それぞれが社会とのつながりを持っています。探究活動を通して、大学の研究室に認められ、大学卒業後には企業から来て欲しいと声がかかるようなキャリアプランになれば、なおいいですよね。

 

誰もが主役の縦割り発表会

 探究活動の成果は年2回の報告会で、発表して全校生徒に共有される。10月の中間発表会と1月末の探究発表会がその場だが、特筆すべきは6学年縦割りのグループに分かれる報告・発表会だ。

「他の学年の取り組みを参考にしたり、異なる視点からの批評を聞いたりすることで、自分たちの探究活動をブラッシュアップすることができます。下の学年の生徒にとっては、より高度な学びの具体例になり、上の学年の生徒には、下級生を指導したり、手本になったりする責任感が自然に生じます。優秀作品だけを取り上げるのではなく、一人ひとりの取り組みにスポットライトを当てる場にもなります。」

 

グローバル教育もさらに進化

 もともと強みのあるグローバル教育については、一層の強化が行われる。中学校でタイ、アメリカ、高校で北欧3カ国(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)、オーストラリアへ、まさに「世界を一周する」グローバル研修が用意されている。

「世界一周となったのは、言語も文化も異なるさまざまな国々を体験することが重要だからです。北欧3カ国では、ウェルビーイングな生き方と好循環型社会のあり方について学びます。SDGsは今や教育では当たり前になりました。それを前提に、生徒に考えてもらいたいのがこのウェルビーイングです。思考が柔軟な中高生の間に、従来の常識にとらわれない人や社会のよりよいあり方を考えます。」

 アメリカ研修では、武庫川女子大学のアメリカ分校(ワシントン州)の寮に入る。タイでは、チェンマイでのホームステイとバンコクでの寺院巡り。北欧では、フォルケホイスコーレという独自の教育機関で学ぶ。この学校では、知の欲求を満たすことが重視され、試験や成績はなく、民主主義的思考を育てることが目指されている。テストの点数に偏りがちな日本の中高の常識からは思いもつかない学校のあり方だ。

ワシントン州フォートライトにあるアメリカ分校

※「身体的・精神的・社会的に良好な状態」のこと。一人ひとりにそれぞれ幸せの実感がある状態。

 

明るく積極的な一期生

「新コースの一期生は、明るく積極的で、お互いの個性を認め合う傾向が強いと感じます。授業後や放課後の質問の積極さやお互いで教え合う姿に、向学心の強さも感じています。」

 新コースの生徒の様子をたずねると、網本先生がこのように答えてくれた。中1探究活動「地域貢献」では、地域の伝統野菜「鳴尾いちご」を守り・増やす取り組みを行なっている。新コースに先立って昨年からスタートし、すでに最初の目標である「鳴尾いちごを次の学年につなぐ」準備はできた。今後は、収穫量を増やしたその後に何をするのか、を考える段階になっていく。

鳴尾イチゴを守り・つなぐ

「本校の強みは、総合大学の附属校として、さまざまな取り組みを中高6年かけて自前でできるところです。受験にとらわれない環境で勉強のペースも抑えられ、クラブとの両立は高校3年の末までも可能ですし、修学旅行も高校3年で実施できます。また、お互いを認め、協力し合い、自立していく課程こそが男女別学の良さだと思います。

 

進学館

 

武庫川女子大学附属中学校・高等学校
https://jhs.mukogawa-u.ac.jp/
西宮市枝川町4-16 TEL 0798-47-6436

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