大学入試改革や新指導要領で日本の教育は大きな節目を迎えた。その一つの目玉は従来型の知識を覚えるだけの学習からの脱却だ。それに伴って、中高でも従来とは異なる方法での入試が模索されている。今回紹介するのは、2025年度入試から新設される山脇学園の理数探究入試。高校教頭の髙村隆博先生、入試広報部長の堀江綾先生にお話を伺った。
2025年度「理数探究入試」新設
赤坂御所の近くに、教育用の屋外実験場まで備えたキャンパスを構える山脇学園。同校は、これまでも理科の実験・考察・レポートで選考する「探究サイエンス入試」を実施するなど、新しい時代の入試方式に挑戦してきた。2025年度入試で新たに導入されるのが「理数探究入試」だ。
「以前の探究サイエンス入試では、限られた時間内で実験についての考察・レポートをする形式で、受験生の学力を十分に見ることが難しい面もありました。そこで、ペーパーテストの形式に戻しつつも、探究サイエンス入試の理念を引き継ぐ入試方式を導入します。」
髙村教頭によると、理数探究入試の出題方針は、ただ覚えただけでは解けないもの。問題の全体像を掴む力やバラバラに並ぶ情報から背後にある規則性を見つけ出す力などを測りたいという。解き方や公式の丸暗記ではなく、なぜ、その式を使うのだろうか、という疑問を持つ受験生に来てもらいたいと話す。
プレゼンが得意で考える力を持った生徒たち
「新しい入試では、従来型の入試で見つけ出せなかったタイプの生徒、いろいろな生徒に入学してもらいたいと考えています。他の生徒と良い意味で影響を与えあって、お互いにない発想や着眼点に気がついてほしい。」
伝統と人気を誇る同校。「とにかくこの学校に入りたい」という受験生が一般入試と併願するケースも多いそうだ。それでも、同校の新しい入試でどのような生徒が有利になりやすいのかは気になるところ。以前行われていた探究サイエンス入試で入学した生徒の共通点を尋ねると、次のように教えてくれた。
「プレゼンが得意な生徒が多い印象があります。他にも、複合的に物事を見ることができたり、深く考えたりする力を持っています。良い意味で特長のある生徒だと感じています。」
注目のサンプル問題
同校のウェブサイトに、理数探究入試のサンプル問題が公開されている。算数・理科の2教科で、例えば理科は大問2つからなる。大問1問目は、琵琶湖の外来種の問題と、琵琶湖の周辺地形を活用したエネルギー産出に関するもの。注目してもらいたいのは、問5。「あなたはダムをつくるのに賛成ですか、反対ですか。賛成か反対かを理由と共に簡潔に述べなさい」(問5より抜粋)と、教科書には正解が載っていない「あなたの考え」を問う形式だ。
「志」を育てる教育
同校では、一人ひとりの「志」を育てて、支援していくことを重要視している。それが端的に現れているのが豊富な学校行事。真剣で一生懸命に取り組む生徒が多く、行事を通じて、気の合う仲間も合わない仲間も本音を出し合い、お互いを深く知り合い、認め合う校風を成す。
「6年間で将来の目標が見つかるとは限りません。しかし、志を育てることはできます。何を面白いと感じるのか、どんなことに興味を持つのか、それが中高で大切なことだと思います。そのためにも、さまざまな知識をできるだけ身につけて、やってみたいと思ったことにどんどん挑戦してください。やってみないと見えない景色があるからです。」